バーチャルキャスト法人向けエディション事例紹介(2) 株式会社NTTドコモ様
コンピューターグラフィックスの国際的な学会「SIGGRAPH 2019」内で開催された「World VTuber Showcase」では、2017年からの日本と中国での取り組みが評価される形で『直感×アルゴリズム♪』AIアイドルKilinとXiが見事グランプリに輝きました。
この日中共同制作の視聴者参加型生放送アニメシリーズ『直感×アルゴリズム♪』の世界観を、VR空間に構築するプロジェクト『直感アルゴリズム♪出張版 麟麟家-LinLin HOUSE-』には、バーチャルキャストが用いられています。
今回は『直感×アルゴリズム♪出張版 麟麟家-LinLin HOUSE-』を手掛ける株式会社NTTドコモ・スマートライフ推進部 オープンイノベーション戦略 オープンイノベーション推進担当課長・副島義貴さんを訪ね、その導入経緯や裏側部分についてのお話を伺いました。
――まず始めに、御社ではどのような用途でのバーチャルキャスト導入を目指されたのでしょうか。
中国移動さんとNTTドコモで「5G時代の新しいエンターテイメントの形やIPプロダクションを作っていこう」ということで、3年ほど前からプロジェクトが立ち上がっており、バーチャルキャラクターを使ったコンテンツ(ライブアニメーション)に日中共同で取り組んでいるというものが私たちのプロジェクト根幹です。
日本のバーチャルアイドルと中国のバーチャルアイドルが協力して成長していったり、歌を一緒に歌ったりというストーリーの「直感×アルゴリズム♪」(1st Season)を2017年8月にニコニコ動画さんと中国のビリビリ動画さん、中国移動さんのプラットフォームを含めた日中生放送を行い、2018年10月から2019年2月にかけては全18話の2nd Seasonをやらせて頂きました。
本編アニメは独自システムで日中生放送をやっているんですが、このようなコンテンツではお客様とのコミュニケーションが重要なので「キャラクターとお客様をどういう風に繋げるか」という仕掛けに“バーチャルキャストを導入出来ないか”との企画が持ち上がったのが導入経緯です。
――実際にバーチャルキャスト導入での手応え、実現できた内容など教えて下さい。
バーチャルキャストさんが対応する機能の一つに「Vギフト」というものがあり、私どもではまだ実験的な使い方しかしていないのですが、やはりお客様とのコールアンドレスポンスの中で「Vギフト」が思っていた以上に反応が良く、「キャラクターとお客様を繋ぐこと」が自然に実現できた印象を持っています。特にお客様が投げるVギフトのアイテムを「直感×アルゴリズム♪」の世界観に合わせた形でご提供することで、より多くの方に参加していただけていると実感しました。
――配信ではビリビリ動画とのコラボ、2ヶ国語配信という前衛的な試みが印象的ですが中国側の利用者反応、日本側の利用者反応などいかがでしょう。
中国側にはまだバーチャル空間上でのライブ配信という仕組みがあまりなく、ビリビリ動画を通してお届けをしているという形になります。
インタラクティブな仕掛け自体は本編アニメ生放送でも実現できていたのですが、言葉がそれぞれ違うという中で、バーチャルキャストさんの機能に「VRホワイトボードに絵を描く」というものがあるんですが、“言葉以外で何かを伝達できる、表現できる”というやり取りがシンプルなんですが凄く面白いと感じました。
他にも身振りや手振りでの伝達ですとか、これはバーチャルキャストならではのもので、“リアルな世界と同じ伝達手段が使える”という面白さ、これを活用させて頂いています。
本当にキャラクターとお客様との間で“対人関係に近いやり取りが出来る”印象を持ちました。
――台湾バーチャルキャラクターとのコラボレーションもありましたが、いかがでしたか?
このコラボ機能は先日始めて使わせて頂きましたが、バーチャルキャストさんが非常に優れているなと言う点があらためて実感出来ました。
VRMフォーマットを使ってキャラクターが作られていれば、同一空間上で簡単に共演できる、しかも日本のスタジオと台湾のスタジオと物理的には離れていても、グローバルに凸できる、この「離れていても同一空間上で共演できる」というのは、リアルな放送ではなかなか難しいことなのですが、バーチャルキャストさんでは、このような形で簡単にコラボが実現できます。
今まで他のVTuberさんとコラボする際に、それぞれ独自のシステムで実現していたので、コストやできることの制約がかなりありましたが、バーチャルキャストさんの仕組みでそういった事が解消されました。バーチャルキャラクターIPを育てるという意味合いでは非常に有用な仕掛けと言えます。
――配信の世界観などかなり凝った内容となっていますが、導入決定から配信スタートまでの準備はどのようなスケジュールで進められたのか教えて下さい。
バーチャルキャストさんのシステムが汎用的なので、本編生放送アニメ用に作っていたものをそのままインポートできたんです。ここも私たちとしては非常に助かりました。
本編ではUnityをベースとしたライブアニメーション独自のシステムを構築して使っているんですが、3Dモデルや背景アセット等は、軽微な修正のみで活用出来ました。エンタープライズメニューの機能を使わせていただくことで、背景アニメーション部分も再現できたので、本編とほぼ同じ環境を再現することができました。
実際の準備期間はVRMモデルでのインポートや背景のインポートも含め、実質2ヶ月もかかっていないと思います。
――キャラクターや背景といったVR空間以外の準備はいかがでしたか?
ある意味本編アニメ以上にやれることが自由なので、演者さんの練度を高めてもらうため、本番に近い環境で練習をしてもらいました。最初は戸惑いもあったようでしたが、2~3回ですぐにコツを掴んで頂けたようで、今ではVR空間上で凄くキレイな絵が描けるというレベルにまで至っています。
――配信までのコスト感などはいかがでしたでしょうか。
本編アニメに比べるとバーチャルキャストさんの方が遥かに低コストで運用できています。
私たちとしての課題は、今後いかに少人数でまわしていくかという点です。
こういったコミュニケーションの部分でIPを育てる側の立場としては、“演者さんの負担にならない範囲内で配信頻度を上げたい”。
ただ、その頻度を上げることによってコストも上がってしまうことになると難しい部分が出てきてしまうので、最少人数でどう回していくかという点で今ノウハウを蓄積しているところです。
――配信スケジュールや、どのくらいの準備時間を設けているのかという点を教えてください。
配信は現在週1回やっていますが、3~4日前に台本を作り、まず演者さんと共有します。
あとは、当日2時間前にリハーサルをやって本番に望むというだけです。
――VR空間という国境やボーダーのないバーチャルキャストで世界配信へ挑んでみて、国境を超えての情報やコンテンツ発信というものに感じられる将来性や可能性はいかがでしょう。
凄く可能性を感じています。それぞれの国のバーチャルキャラクターが同一空間で一緒にワチャワチャできるということ自体がお客様にとっても凄く面白いことで、それがまさに国境無く、例えば私たちが今手掛けている中国や台湾、他にもいろいろな国や地域のキャラクターと共演出来る。そういう世界が既にバーチャルキャストさんの中では実現できています。
コミュニケーションや音楽ライブを例に取ると、現状ではお客様自身が国境を超えて物理的に中国のライブに行ったり日本のライブに行ったりしなければなりませんが、VR世界を使えばお客様が自分の国にいながら同一のライブ会場にいる体験ができます。
これはリアルを超えた体験になるのではないかと思っています。
私たちが目指しているバーチャルは「リアルを超える」ことです。前述の体験はまさに「リアルを超える」ことだと考えています。
――中国にも同様のサービスが台頭してくる中でバーチャルキャストを選んだというポイントを教えて下さい。
一つはVRMというフォーマット、共通フォーマットでアバターが扱えるという点、そして色々なキャラクターとコラボが出来るという点に、IPホルダーとして魅力を感じました。
もう一つはバーチャルキャストさん自体がニコニコ動画、SHOWROOM、REALITYといった配信レイヤーに対してマルチプラットフォームで対応している点に使い勝手の良さを感じました。
日本にいながら様々な国に、しかもバーチャルキャスト体験とセットでコンテンツを提供できる。
ただ2Dで映像を流すだけならYouTubeでも良いと思うんですけど、双方向のインタラクティブとセットで、しかも各国のプラットフォームと連携して今後も配信ができる、こういった空間でIPを育てていきたいという思いもあります。
――バーチャルキャスト導入で切り開かれた、開拓された部分を教えて下さい。
先ほどもお話に出ましたが、一つは「Vギフト」という部分。お客様から直接的な応援を受けられる。しかもそれが収益のモデルになるという体験はとても面白いなと思いました。
単なる投げ銭であればこれまでにもあったのですが、「キャラクターが住む世界に影響が与えられる」というギフト機能はお客様にとっても、受け取る私たちとしても新しい体験で、ここから発生するコミュニケーションには新たな可能性を感じました。
もう一つは、海外のキャラクターと別の国やスタジオにいながらも同時にイベントや配信が出来るという体験も大きかったと思います。
私たちは現在、日本と中国を中心にキャラクターを互いに知ってもらう、またその他の海外のキャラクターとコミュニケーションを取っていくというのがテーマでもあるので、海外キャラクターとのコラボという点は非常に大きいです。
自分たちの世界観の中で他のキャラクターとコラボが出来るというのはバーチャルキャストさんの大きな魅力の一つかなと思っています。これは独自システムを構築していてはなかなかうまくいかないことで、どうしても相手側に合わせてもらわなければならないもしくは相手に合わせないといけない部分が出てきてしまいます。
この2点がバーチャルキャストさんを使っていて大きく可能性が切り開かれた部分です。
――それでは最後になりますが、バーチャルキャストと共に今後挑んでみたいビジネスのビジョンなどありましたらお願います。
現在の番組はVtuber同士が凸することで構成されていますが、内容や企画によってはお客様のアバターと直接VR空間上でコミュニケーションを取るというのもあり得るのではと考えています。
お客さんにとって新しい体験を提供していきたいという点は、私たちも常に意識がけています。
バーチャルキャストを今後活用していくであろう海外キャラクターとのコラボ、国境を越えた体験というものを、お客様と一緒になって切り開いて行けるコンテンツの提供ができればと考えています。また私たちは5Gを提供する通信事業者として、バーチャルキャストさんのようなしくみと5Gの大容量・低遅延・多接続という価値をどのような形で融合して、お客様の体験として満足していただくか?こういった観点でも一緒に挑戦していければと考えています。
――本日はお忙しい中貴重なお話本当にありがとうございました。
ありがとうございました。
※直感×アルゴリズム♪ ニコニコチャンネル
→https://ch.nicovideo.jp/project-algorhythm
※バーチャルキャスト法人向けエディションについての詳しい情報はこちら
→https://virtualcast.jp/enterprise/
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