バーチャルキャスト法人向けエディション事例紹介(3) 松竹芸能株式会社様

VR空間でプロのお笑い芸人が自らバーチャルキャラクターを操り「バーチャル漫才」に挑むという企画で話題を集める、人気お笑いコンビ・アメリカザリガニ(松竹芸能)。

 

現在はニコニコ生放送にて 「業界初VR漫才ライブ アメザリノライブイアール」を月に1度のペースで配信していますが、その企画が立ち上がった当初の様子から現在の状況、そして今後の展望までをアメリカザリガニのお二人(柳原哲也さん・平井善之さん)に訪ねてみました。

 

 

 

――バーチャルキャストを利用した「バーチャル漫才」は前代未聞の試みですが、まずはバーチャルキャストとの出会いを教えて下さい。

 

平井: バーチャルキャストの会社を作っている北海道のインフィニットループさんにお伺いし、バーチャルキャストの開発状況やどこまで使い込める仕様になっているのかという現状に触れたことがきっかけです。

 

関西ではお笑いの劇場が時代とともになくなっていってるんですけど、昭和の時代には劇場いっぱいあったんですよ。

「五座」って言われる有名な5つの劇場を中心に、最盛期は小さいライブハウスみたいな劇場がいくつも存在していて、カルチャーとしてお笑いが凄く盛り上がっていたそうです。

これが時代とともになくなっていくんですが…、やっぱりなくなってしまうのはもったいないなと。

なんとか復活させたいという思いがあり、「劇場がバーチャル空間で再現できたらいいな」というコンセプトのもと…、今はまだ舞台しか再現できていないという(笑)

 

 

――ということは、当初から「バーチャル漫才」ありきでツールを探されていたということでしょうか。

 

平井: そうです。角座というステージをもっとブランディングしたいなと思っているんです。

そのためにずっとツールを探していて、Unity(リアルタイム開発プラットフォーム)を使って…とか、それならC言語覚え直さなあかんのかな…、なんて知識のある方に話を聞いてみたらC++やらC#も出てきて、これは少人数では無理やな~って。

色んな技術者の方にお会いしたりして意見をもらっても、やっぱり「大きなプロジェクトになっちゃうね~」という感じで、簡単なことじゃなかったんですね。

最終的には、「じゃあ、国から研究開発予算を頂いて」なんて話も飛び出したりして…、「ちょっと違うかもぉ~!」って(笑)

 

一同: (笑)

 

 

――平井さん的には、バーチャルキャストの技術が漫才に応用できるまでに成熟しているという判断があったのでしょうか。

 

平井: そうですね。導入しやすさもバーチャルキャストが一番だと思っています。

個人で何かしらの配信をされる方も今は多いじゃないですか。なので個人向けツールももちろん色々あるわけですが、利用人数を1人で想定しているツールが多いんです。

僕らは基本的に1人で何かをするというわけではないので、漫才では2人、これが演劇だったりするともう少し人数も増えますし。そうなってくると対応人数的にも段々ツールが合わなくなってきちゃうんですよね。

バーチャルキャストは多人数にも対応できますし、操作も一番楽ですね。楽ちんなので導入を決めました。

 

 

――平井さんからは楽ちんとの言葉がありましたが、柳原さんは導入に関してどのような印象を持たれましたか?

 

柳原: 最初に色々説明はしてくれるんですけど…、何言うてるかわからないんですよ(笑)

僕が思うに、相方は松竹芸能で一番こういうIT的なものや最先端のもの、おっさん的に言うと“パソコン”“マイコン”みたいなジャンルに長けてるんですよ。

逆に僕は未だにガラケーを使っているくらい、松竹芸能の最下にいるアナログ芸人なんです。

 

それでも触れてみて、当然実際の角座で漫才をやるのとは違うんですけど、“漫才をやる”ということに関しても、やっぱり「楽ちん」を感じました。

これはどの芸人にも言えることなんですが、基本的に芸人ってネタは覚えてますけど、それでも忘れないように手の甲に書いたり、舞台に貼ったりしてるんですね。

ところがこのバーチャルの世界では台本を目の前に置いておいてもいいんですよ(笑)

それこそ衣装も着なくていいですし。

なので、“さらに1個余裕ができる”という感覚が楽しいですね。

始める前は、お客さんとの関わり方、お客さんの反応がダイレクトではないという不安がありましたが、バーチャルの世界では文字でお客さんのコメントが流れてきたり、お客さんが物を投げてくれたりするんですよ。(バーチャルギフト機能)

これまではお客さんが“笑うか笑わないか”という反応だけだったので、新鮮な感覚でした。基本的には漫才という同じことをやってるのに、リアルとバーチャルでここまで違うのかと。

もちろんバーチャルならではの大変さもありますよ、気がついたら首が疲れてたり、リアクションしたら壁に手をぶつけたり(笑)

あまりにもバーチャル世界がリアルに出来てるんで、ついつい身体が大きめに動いちゃうんですよ(笑)

 

 

――バーチャル空間内がリアルとの言葉がありましたが、実際にバーチャル世界でキャラクターを扱う感覚にはすぐ馴染めましたか?

 

平井: バーチャル世界でのアクションという意味合いの使い勝手にも、すぐ慣れることが出来ました。

“こうすれば、こうなるんだ”というふうに、相方も早いタイミングで直感的に操作をマスターしていました。

手に持ったコントローラーを動かすことで主観的にキャラクターが動くので、ゲームに興味がない方でも直感的にわかるんじゃないかと思います。

 

柳原: 複雑ではないですね。ただ、慌てて怒られて間違えるということはしばしば(笑)

 

 

――配信ではユーザーたちが参加できるという漫才の新たな形を感じますが、「バーチャル漫才」を取り入れてお客さんの反応はいかがでしたか。

 

平井: “動きが面白い”とか“見てて楽しめる”という言葉をもらうことがあります。女性のお客さんからは、“キャラクターが可愛らしくて愛着がもてる”というコメントもありますね。

生身で漫才している時より、反応が多いです。

 

 

――実際にやってみてわかったことや手応え、実現できたポイントなどいかがでしょう。

 

平井: 細かい部分で言うと、実際の舞台と同じ大きさ、同じ広さ、できるだけ同じ雰囲気で作ってるんです。これが簡単に再現できたのには驚きました。

それでも、まだまだやりたいことの全体からすると、今再現できている部分は2~3%です(笑)

 

柳原: バーチャル世界の舞台袖で相方を見てたら「あ、角座やん」って感覚になりましたからね(笑)

いつも通りなんですよ。全く同じ距離感で、センターマイクまでの感じとか、袖にある隠しの隙間から舞台を覗き込む感じとか。隙間まで再現できてるんですよ。

 

 

――話は少し戻りますが、バーチャルキャスト導入を決定してからの準備や流れ、その期間なんかはいかがでしたでしょうか。

 

平井: 早かったですよ。ステージ制作に1ヶ月くらい。大体それくらいで出来ちゃうんです。

凄いスピードで出来たんで正直よく覚えていないくらいですが、難しいことはなかったです。「あれ!?もう出来たん!?」って(笑)

ホントは舞台の外観も作りたいんですけどね。

 

 

――バーチャルキャラクターについてですが、デビュー当時のお二人をイメージしたキャラクターというのは本当でしょうか。

 

平井: そうですね。

 

柳原: えっ!?そうなの?

 

一同: (笑)

 

柳原: 俺らデビュー当時あんなイケメンやったっけ?

俺あんな髪の毛サラッサラやったっけ?

 

一同: (笑)

 

平井: なんか出来る限りイケメンに作ろうって思って、相方を一生懸命作りすぎたんで、平井キャラに“適当感”がありますね。目の焦点が合ってませんからね。

キャラクターはIVRさんのアプリを使って作ったんですが、2時間くらいで出来ました。

髪はこれ、目はこれ、こんな感じで~ってやっていくだけですからね!いいっすよ~!

IVRさんめちゃくちゃお世話になってます!

 

 

――バーチャルキャストの気に入っている機能などありましたら教えて下さい。

 

平井: なんと言ってもコラボ機能、凸機能ですね。これは他では絶対出来ないので。

今回ゲストで朝ノ瑠璃さんに来てもらったんですが、実際は全然離れたところからのコラボですからね。実際は“里”に住んでるって言ってましたから、かなり遠いです(笑)

朝ノ瑠璃さんは今人気ですからね。この前もTwitterトレンド入りしてましたし。

そんな子に“是非来て下さい!”って言って、すぐに実現出来るじゃないですか。この機能は他にない素晴らしいポイントですね。

 

柳原: 前に僕ら、東京にいながら、名古屋のイベントに出たこともありますからね。

そこには実際のお客さんがいて、スクリーンに僕らが出てきて漫才するんですよ。

「え、もう新幹線乗らんでええやん」って(笑)

この感覚は不思議でしたね。名古屋の何百人っていうお客さんの前でネタやって、ちゃんと返しのモニターでお客さんの笑いの様子とか反応も見えてて。

そういった意味ではスケジュール的な障壁も越えられるし、移動費という経済的なハードルも越えられるし、僕ら的にもスーツ持って靴もって移動して~って現地に行っても天候が悪くなって中止とか、電車や飛行機が止まって~なんて部分が越えられるのでやっぱり楽ちんなんですよね。

 

平井: 今だけ初期費用無料になってますからね!機材を揃えるだけで家から漫才が出来ます!

投資に比べたら安いもんですよ。

 

 

――現在は月に1度の配信ですが、配信スタート前の準備にはどれくらいの時間を使っていらっしゃいますか?

 

平井: ネタの制作は別にして、コラボの時でも準備は2時間~3時間ですね。配信の枠建てて、調整したり、リハーサルしてみたり。

個人の時は30分かからないですよ。だって、電源入れるだけですもん!(笑)

 

一同: (笑)

 

平井: ホントにバーチャルキャストは各会社が受け皿として持っておいて欲しいんですよ。

そうすると色んなVTuber呼んだイベントとかも簡単に出来るんで。

コラボの幅広がるし、双方にかなり効果高いと思いますけどね。

 

 

――マネージャーさんにもお伺いしたいのですが、マネージメント側として「バーチャル漫才」をやりたいという平井さんの提案はどのように捉えられたのでしょうか。

 

マネージャー: 平井が新しい物好きなので、マネージメント側はどちらかと言うと新しい試みや申し出に対して受動的に受け入れている感じです。

今までも「時代の先を行くコンテンツ」に積極的なアプローチをしていますが、バーチャル漫才は「さすがアメザリ!」と言って頂ける大きなコンテンツであると考えています。

 

 

――実際にスタートした「バーチャル漫才」について、現状はどのような印象をお持ちですか。

 

マネージャー: VTuberで芸人、なおかつ顔出ししてやっているという人が現状多くないので、まずはVTuber芸人第一人者としての売出しが出来たというのは大きなポイントであると感じています。

メディアの方からも「あ、VTuberもやってるんだ」という新しい発見として捉えてもらえるのがありがたいです。

 

 

――テレビとVTuberと言えば、「NHKバーチャルのど自慢」が大変な話題となりました。

 

マネージャー: 大変ありがたい事例です。

テレビとVTuberという番組コンセプトはまだ多くないですが、このようなコンテンツには必ず名前が上がる芸人でありたいです。

 

 

――マネージメント側として、今後の「バーチャル漫才」にはどのような期待値がありますか。

 

マネージャー: 一般的に漫才に触れる方々にとっては、まだまだアメザリも普通の漫才師なので、もっと「バーチャル漫才師」を押して行きたいと考えています。

この路線にはまだまだ広がりを感じていますし、出来ることも多いと思うのでみなさんと一緒に盛り上げていければと思っています。

メディアの方には「バーチャルと言えばアメザリ!」と即答してもらえるようにしていきます!

 

柳原: ありがたい事に今はVTuber芸人の第一人者、バーチャルに挑んだ初の漫才師と言ってもらえているので、バーチャルキャストにしか出来ないネタで、バーチャルキャストと共にトップを走り続けることが出来ればと考えています。

 

 

――お二人への質問に戻りますが、バーチャルキャストを用いたバーチャル漫才で新たに切り開かれたと感じる部分があれば教えて下さい。

 

平井: 見た目を変えられるんで、コントごとにキャラクターを変えられるんですよ。この感覚は新たに開かれた部分と感じました。

 

柳原: 早替えが早い!(笑)

早替えというか別のキャラクターですからね。めちゃくちゃ可愛いのに平井の声という。

舞台の壁もすり抜けられますし、道具も持つことが出来ますし。まだバーチャルに特化したネタは簡易的な何個かしか作ってないんですが、今後はもっともっとバーチャルに特化したネタを作っていきたいですね。

他にも、「まだまだ気がついてない色んなこと出来るんやろな」と思ってます。

 

 

――それでは最後になりますが、バーチャルキャストを利用して今後新たに挑戦してみたいことやチャレンジしてみたい企画などあれば教えて下さい。

 

平井: スクリプト入れてカスタマイズや拡張していきたいですけどね~。

 

柳原: えっ!?それなんの話!?教えて

 

一同: (笑)

 

平井: 若手なんかを集めて、バーチャルの中でみんなが楽しめるような「8時だョ!全員集合」や「オレたちひょうきん族」みたいなこともやってみたいですね。

 

柳原: 松竹新喜劇やりましょう!

僕ら自身のキャラクターを次々と変えていくのもやりたいですね。

モリゾーとキッコロみたいなキャラだったり、美女二人だったりすると同じネタでもまた違うものになりそうじゃないですか。

 

平井: それ、次回やるわ。

 

柳原: 早い!

 

一同: (笑)

 

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※バーチャルキャスト法人向けエディションについての詳しい情報はこちら
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